1.知的資産経営とは

 

 

(1)知的資産 

 

 「知的資産」とは特許やブランド、 ノウハウなどの「知的財産」と同義ではなく、それらを一部に含み、さらに組織力、人材、技術、経営理念、顧客等とのネットワークなど、 財務諸表には表れてこない目に見えにくい経営資源の総称を指します。「知的資産」は企業の本当の価値・強みであり、企業競争力の源泉です。企業経営・活動は、知的資産の活用なしには成り立たないものなのです。 

 

 平成17年8月10日「知的資産経営の開示ガイドライン」が経済産業省より公表されました。ここで、企業の超過収益力、企業価値を生み出す源泉として、有形資産以外のものを総称して「知的資産」と定義されました。

 ところが何が知的資産なのかと、無形の資産をどう呼ぶのかということは明確になっているわけではなく、さまざまな書籍を見ると、論者により、その論者がどんな分野を意図しているかにより多くの呼び方が使われています。例えば「知的資産、知的資本、知的財産、知識資本、知識資産、ナレッジ、インタンジブルズ」などがあります。

 

 

(2)知的資産経営 

 

「知的資産経営」とは知的資産を把握し活用することで、業績の向上や、会社の価値向上に結びつけることを言います。会社の強み(知的資産)をしっかりと把握し、活用することで業績の向上や、会社の価値向上に結びつけることが「知的資産経営」なのです。 

 

企業が勝ち残っていくためには、差別化による競争優位の源泉を確保することが必要です。差別化を図る手段は色々ありますが、特に大きなコストをかけなくても身の回りにある「知的資産(見えざる資産)」を活用することによって、他社との差別化を継続的に実現することができ、 ひいては経営の質や企業価値を高めることができるのです。 

 

 

(3)知的資産経営報告書 

 

「知的資産経営報告書」とは、企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産の認識・評価を行い、それらをどのように活用して企業の価値創造につなげていくかを示す報告書です。 

 

過去から現在における企業の価値創造プロセスだけでなく、 将来の中期的な価値創造プロセスをも明らかにすることで、企業の価値創造の流れをより信頼性をもって説明するものです。 

 

従来の財務諸表を中心とした評価では、中小・ベンチャー企業の真の姿(価値)を知ってもらえないことがあると思います。 また、経営者にとって当たり前のことでも、周りの人が必ずしもそれを知っているとは限りません。 

 

知的資産経営報告書は、中小・ベンチャー企業が有する技術、ノウハウ、人材など重要な知的資産を的確に認識し、相手(ステークホルダー)に伝えるために大変有効なものです。 

 

 

 

2.知的資産の種類

(1)人的資産 

   ・・社員の退職と一緒に失われる資産(例:仕事のコツ、ノウハウ) 

(2)構造資産 

   ・・社員が退職してもに企業内に残留する資産(例:マニュアル) 

(3)関係資産 

   ・・企業の対外的関係に付随した全ての資産(例:ネットワーク) 

  

人的資産の構造資産化 

  ・・人的資産を社員が退職しても社内に残るような形にすること。 

 

 

3.知的資産経営支援とは

専門家の中にも、知的資産経営とは知的資産経営報告書を作ることで、知的資産経営支援とは知的資産経営報告書の作成を言うと考えている方も少なくないようです。行政書士の仕事はといえば、知的資産経営報告書という書面を作成して終わりのようです。

知的資産経営というのは、何をどうすればよいのかを、きちんと考えたことが無いから、おぼろげにそのように感じているのではないでしょうか。

 

 当センターでは、知的資産経営とは、企業や個人の持つ知的資産を活かし、経営に役立てることだと考えます。従って、報告書にこだわる必要はなく、知的資産経営に継続的に取り組むことにより、企業業績が良くなり、その結果、行政書士の報酬にもなるというのが理想的です。

ですから単に知的資産経営報告書を代書するのでは不十分なのです。

 

 

4.知的資産経営支援での専門家の役割

「専門家と言っても、その会社を良く知らない人に、支援ができるのか」という疑問は、経営者の側にも支援者の側にもあるようです。当然、その会社の経営者の方が、自社のことは良くご存知です。専門家は、その経営者以上の経営者であると言うつもりはありません。

 

プロスポーツの世界では、超一流の選手にもコーチがついています。名コーチと言われる人でも、現役の頃、超一流であった人は限られるようです。そこでコーチの役割は、本人がそもそも気づいていたことを明らかにすること、あるいは改善のヒントに気づかせてくれることになるでしょう。

組織の場合であれば、専門家という名前を利用して、経営者の考えを従業員に浸透させるという役割を持たせることもできるでしょう。

 

 

5.具体的なツール

「知的資産経営」に取り組むとした場合、具体的にはどのようなツールを使うのでしょうか。

これには経営改善・経営戦略の構築の為に、従来使われてきたツールや新たに使われはじめたツールがあります。

例えば、ブレーンストーミングを行う際に使う、KJ法はグループワークを行いながら、自由な発想で、物事を考え、新たなアイデアにつなげるというものです。

バランススコアカードは、様々な視点から、物事を考え、整理するのに使われます。SWOT分析も一般的に使われるものです。

こうしたツールだけでなく、社歴や経営理念なども含めた、知的資産経営報告書も、全国のさまざまな企業で利用されています。

さらに、ローカルベンチマークでは、会計データだけでなく、経営者の考えなど、目に見えにくい要素も把握し、金融機関と企業とのコミュニケーションツールとして使うこととされています。

ツールは、単に穴埋めするものではなく、そこから企業経営に役立つものが生まれることが重要ですので、継続的に使われる必要があります。

企業が、中間・期末決算などをするのと同じように、目に見えにくい知的資産という要素についても、棚卸し・決算書作成(知的資産経営報告書等作成)を、決算時期にするべきだと考えます。